「もしもし?お母さん?綾だけど」


「どうしたの」


なんだか、話し辛そうだったけど


どうせ、お父さんが原因だろうなと思ったから


気にせず、話しを進めた。


「あのね、思うように仕事が続けられなくて、正直もうお金がないんだ…」


「うちだって、貸せるようなお金はないわよ」


「違うよ。仕事が安定するまででいいから…

春陽をまた預かってくれないかな…


春陽だけでも食べさせてあげたいんだけど…」


「そうね。親は食べなくてもいいから春陽だけでもなんとかしないとね…親は大変でしょ」


「だから、預かって…」


「施設にでも入れればいいじゃない」


「!?」


「お兄ちゃんが離婚して子供をうちに置いて行方不明だし」


「お兄ちゃんの子供は育ててるのに、春陽はもう、見てくれないんだ」


「みれないわね」


「もう…いいよ…」


お母さんだけは


私の気持ちをわかってくれていると


信じてた…のに…


家に帰る途中に橋を渡らなければいけない


橋を半分まで渡ったところで


歩きながら押していた自転車を止めた。

まず、かじかんだ手に息をかけて


上を向いた


雪が無数に舞い降りて


涙があふれた