「…ねぇ、バクさん、あなたは夢を食べるバクさんだけど、どんな夢がおいしい?どんな夢が好き?」

 まどろみちゃんは今までずっときいてみたかったことをたずねてみました。バクさんはうーん、と少しうなってから「ほくほくしてあたたかいような、そんな夢かな?」と言いました。

「でもぼくは嫌な夢を食べるのが仕事だから、そういういい夢はおつまみていどにしか食べたことがないんだ」

「そっか。ほくほくしてあたたかい夢か」
まどろみちゃんはその言葉をかみしめるように口にしてから「あたしは深くてくったりとした、どろのような夢が好きなの」とバクさんに教えてあげました。

「そうか。それは好き嫌いが分かれそうな夢だね」

バクさんは少し笑ってから「ほくほくしてあたたかいような夢はどうだい?」としんけんな顔をしてきいてきましたのでこれはしんけんに答えなくてはいけない、とまどろみちゃんもうーんとしんけんに考えて、「好きでも嫌いでもないわ。たまに見るていどでいいってかんじ」と考えたことをそのまま言いました。

するとバクさんはひとみをぱあっとかがやかせてこう言いました。

「じゃあまどろみちゃん、君がもし、ほくほくしてあたたかいような夢を見ていたら、もらってもいいかなぁ?」
「うん、いいわよ」

まどろみちゃんはすぐに返事をしました。「でも、ほくほくしてあたたかいような夢もたまには見たいからぜんぶは駄目よ。いつ見てるからわからないから毎日きて二回に一回くらいにしてね」

「うん、わかった。二回に一回くらい、食べさせてもらうよ」
バクさんはうなづきながらうれしそうな顔をしました。

そして立ち上がって言いました。「じゃあそろそろ仕事の時間だから」

「毎日見に来てね」まどろみちゃんは念を押しました。「食べるときはおなかいっぱい食べていいからね」

「毎日行くよ」バクさんは返事をしてとことこと歩いていきました。

 まどろみちゃんは川の水をけり上げながらいっしょうけんめい、ほくほくした、あたたかいものを考えました。そして、あんまり好きじゃない夢もバクさんは好きかもしれないからいろんな夢を見て、また会ったら聞いてみようと、ちょっとわくわくするのでした。


《おしまい》