木苺の棘

明かりの灯る
マンションの前だけが
明るくて、その一寸
向こうは真っ暗。

薄明るい外灯の光に
向かって飛んでいる蛾。

何度も何度も光に
体当たりしている姿を
見つめていると、私の頬に
雨がポタッと落ちてきた。

「雨・・・」

私の瞳に、置き忘れた
赤い傘が映る。

そう言えば、ずっと
この場所に置き忘れ
られている傘・・・

かわいそうだね・・・

持ち主のいない、その
赤い傘を、いつの間にか
私は手にぎゅっと
握り締めていた。

ポタッポタッ・・・

雨が降り出す。

その時、一台のタクシーが
停まる。