木苺の棘

「そうか、それなら良かった
 
 愛した女に、自分の死を
 いつまでも嘆き、悲しまれ
 でもしたら、アイツの魂は
 死ぬに死にきれず
 
 この世を彷徨う・・・
 
 そうだ、それ必要無ければ
 俺に返してくれないか?
 大事な形見分けなんだ」

大事な形見・・・

「ごめんなさい
 私・・・返せません
 これだけは・・・」

巽が大切にしていた、ジッポ。

煙草を吸う、巽の姿を思い出し
私の瞳から涙が溢れ出す。

頬を流れる、その涙を
貴方、敢(イサミ)さんは
翳した手の平で優しく
拭ってくれた。

そして、優しい声で呟いた。

「アイツを思い出させて
 悪かったな
 ・・・すまない」

私の瞳に映る貴方は
やっぱり、巽に似ている。