木苺の棘

「はい、頂きます」

「ああ」

それからは、周りの人が
話しているだけで、貴方は
一言も話さない。

煙草を銜える貴方に
私は火を付けた。

「ありがとう」

彼の横顔は、とても
疲れているようだった。

後に、リラさんから聞いた
話では、ママの恋人が
巽の兄貴分に当たる人で

彼は、こうしてよく仲間と
一緒にこの店に顔を出して
いる。

夜の仕事に付いて二ヶ月が
過ぎた頃、私はある事に
気がつく。

それは、いつも私が座る席

そこは、巽の隣の席で
他のお客様の席に一度も
座った事が無いという事。