木苺の棘

「どうして?」

帰り際、私がママに巽の事を
聞いている声が露歌さんまで
聞こえていたらしい。
 
「ママは何も知らないと言って
 いたけれど、きっとタツミに
 口止めされているのね
 
 モカちゃん、心配しなくても
 大丈夫よ
 彼は、うまく世を渡れる人

 昔の女から、今夜
 最後の忠告
 
 彼が貴女の元を去ったのなら
 追っても無駄よ、逃げるだけ
 諦めなさい

 一緒に乗っていく?」

私は、自分でタクシーを止めて
帰ると、露歌さんと店の前で
別れた。

一人になって、夜風に
当たりたい。

リラさんの言葉も、露歌さんの
忠告も、私の胸には届いている