昼放課。
凜の“一緒にお弁当食べよ!”という誘いを受け机を向き合わせる

机の上に置いた弁当箱を見つめる。

青が作ってくれたん、だよね…

また拒絶された。
その事実が胸に重くのしかかる。ため息を一つついて、飲み物がないことに気づく

「凜ちゃん。私、飲み物買ってくるね」

今、まさに箸をつけようとしていた凜に告げ席を立つ

「場所分かる?ついて行こうか?」

「ううん、大丈夫。ありがとう」

確か、さっき通った廊下の隅に自動販売機があったはずだ。
あそこなら近いし、迷わないだろう

凜が心配そうな表情をしていたので、乙姫はもう一度“大丈夫”と言って教室を出た




人通りの少ない廊下の向こうに赤い箱が見える。
問題なくたどり着いた乙姫は商品に目を通し、どれにしようか考える

季節柄、商品はホットのものが多い
無難にミルクティーにしておくか、と小銭を入れる。
このお金は此処に来るときから持っているもので気兼ねなく使える

「じ、十円足りない…」

思わぬ失態に乙姫は恨めしげにミルクティーを見つめる。

見つめてそれが手に入るわけもなく諦めて釣銭のレバーに触れようとした時―――

「よければどうぞ?」

綺麗な声につられそちらを振り返る。