「そうだね……。でも、乙姫ちゃんは知らなかったでしょ、神隠しが今に始まったことじゃないこと」
「それって騒がれる前から何度も神隠しが起こってる…ってこと?」
「うん。昔は“花嫁”を選定するために外の世界から何人かを攫うことも認められていたんだ。この村でも………世間でもね」
神隠しが認められているという事実にも衝撃を受けたが、最後の“世間”という言葉に一番衝撃を受けた
「世間!?それってどういう――!」
言葉を続けようとした瞬間、視界が開けた
いつの間にか元の神社に戻って来ていた
家には明かりがなく、華紅夜はまだ帰っていないようだった
暗い家中の床はひんやりと冷たく、ゾクッと寒気が巡った
「俺は夕飯の支度をしてくる」
「あっ…!」
今朝の決意もあり、何か手伝うことは――と聞きたいが、正直、先程の虎太郎の話が気になってそれどころではない
こうして玄関口で迷っている間にも青はずかずかと台所に歩いてゆく
「乙姫ちゃん、僕はいつでもいいから」
虎太郎は乙姫の心情を察したように微笑む
「…ありがとう。あの、じゃ…あとでお願いしてもいい?」
「うん。じゃあ僕はお風呂にでも入ってこようかな!」
虎太郎はいつもの笑顔に戻り、着替えを取りに二階へ上がって行った

