傾いた日が暗い森を照らす。
その中に佇む三人

「どうしたの?乙姫ちゃん」

浮かない顔をする乙姫にやはり先程見た妖が衝撃的だったのだろうか、と虎太郎は危惧したが、実際に乙姫の思考を占めていたのはあの少女だった


「さっきまで…女の子がいたの」

「女の子?青ちゃん、分かる?」

「………微かだが、知っている気配がする」

「青ちゃんの知り合い?」

「いや……これは、」

青は言葉を続けようとしたが、途中で止めてしまった

「どうしたの…?」

「いや、なんでもない」

問い掛けてみるが、彼は何かを思い直したように歩き出した
それに乙姫と虎太郎も続いた

森を歩く中、乙姫は怖ず怖ずと口を開いた

「虎太郎くん…」

「なに?」

虎太郎は人懐っこい笑顔で先を促す

「聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「うん!いいよ?何かな?」

頼られたことが嬉しいのか、虎太郎ははしゃぐように笑顔を向ける

「ありがとう。えっと、ね……さっきの生き物が何なのかってことと、電話が通じないんだけど……」

ちらりと虎太郎に視線をやると、彼は明らかな戸惑いを瞳に映していた


「そっか…電話かけちゃったんだ。」

「うん」


二人の間に少しの沈黙が訪れた