境内の前にはふわふわの金髪を風邪に揺らしながら竹箒を動かしす少年が一人いた。

ふと、その手を止め、青い空を仰ぎ見る。雲などなく、澄み渡る青がそこには広がっていた。

ふーっと息を吐き出し再び視線を地上へと戻す。

神社である神薙の敷地はそれなりの広さがあり、境内の周りを掃除するのも一苦労する。

一息ついたところで、そろそろ朝食時だと見当をつけ虎太郎は箒を納戸にしまい、台所へ足を運んだ。

「青ちゃん、朝ごはんできたー?」

笑顔で台所を覗き込みながら問う虎太郎に料理を皿に盛り付けていた青は第一声がそれか、と呆れ返った。

「乙姫ちゃんはまだ寝てるのかな?」

「あいつなら華紅夜様の部屋だ。」

ことの成り行きを見ていた青に対し、何も知らない虎太郎は“なんで?”と小首を傾げている。

「…おそらく今後のことだろう。」

青の考えに“ああ!”と納得し、すきっりした表情をしたが、すぐにその表情は暗くなる。

「乙姫ちゃん…大丈夫かな?」

「……さあな。」


出来た食事を運ぼうと虎太郎の横を通り過ぎようとした青に問い掛けるとあまりにあっさりとした関心のない言葉が返ってきた。