男が消え、残された乙姫と青年ら二人。
乙姫は今は治まった、さきほどの痛みが気になり首筋にそっと触れる。

サクッと近くで音がし、顔を上げるときらきらと輝く金髪が目に入った。


「大丈夫?」

女の子みたいに可愛らしい顔を近づけて心配そうに覗き込む翡翠の瞳。


「えと…大丈夫…」

先程までの熱さもなく、今は体に異常はない。

少年が安堵の息を吐いたのもつかの間…じーっと乙姫の首筋を凝視している。

「青ちゃん、これって…」

首筋に指を指しながら青年のほうを振り返る。

青年は渋い顔になり息を吐く。

「刻印をつけられたな」

「やっぱり…。紅ちゃんも酷いよね!!」

ぷんぷんと効果音がつきそうな怒り方をする少年になんで怒ってるんだろうと不思議に思う乙姫。

気になりつつも、今はおかれている状況のほうが乙姫にとっては頭を悩ませる元凶だ。

「とりあえず、華紅夜様の所に行こっか」

満面の笑顔で手を差し延べる少年を見上げる。
敵意など微塵も感じさせない笑顔――――。

【華紅夜様】が誰だか分からないし彼らが信じられるのか不安はある。
けれど、きっと…私にはこの手を取るしか道は無いのだろう――――。




乙姫は少年の手をしっかりと握った。