「祐乃は飯作るのうまいな」
「いきなり呼び捨てか」
「ぇ、いや・・・ごめん。いつも自殺止めるとき、呼び捨てで呼んでた。嫌だったら・・・」
「別にいいよ。私も心の中ではユウって呼んでるし」
「んじゃ、俺も祐乃って呼ぶ」

 そんな会話を交わし、ご飯を二人で片付ける。

 なんかあったかいなぁ。

 久し振りに他人を近くに感じた。

 いつも、クラスメイトですら私をいないものとして扱うから。

 
『あいついつも屋上にいるんだぜー』
『ぇ、キモッwwww』
『手首の傷、見たー?リスカとかしてるらしいよw』
『あーぁ、あんなヤツクラスにいらないよね』
『首に縄の痕とかついてるときあるよね』

 あいつらは、聞こえていないと思っているのだろうか。

 私には、全部聞こえてるのに。



   ガシャン!!


「ぁ・・・」
「平気か!?」
「あ、ぁの、ごめんなさい」
「ごめんなさいとかいう前に、手!見せろ!」

 ぐいっと手が引かれる。

 どうやら割ったお皿の破片で切ったらしい。

 生ぬるい血が私の白い腕を濡らす。

「・・・救急箱・・・」
「ぁ、無いや。ごめん」
 この前捨てた。そういう気分だったから。

「ったく・・・。ちょっと痛いけど我慢しろよ」
「っ・・・」

 傷にユウが舌を這わす。

 あ、なんか舌熱いな。不快じゃない熱さ。

「・・・とりあえず、応急処置な」
「人の血って舐めちゃいけないんだよ」
「・・・だらだら流れてるよりいいだろ」

 何故か血は止まっていた。