妾は生まれて初めて恋をした。
叶わぬ恋だ。
それでも、想いを捨てられなかった。

「花の雨」

一、出会い

莉 深華は今日隣国である朱晏の皇帝に嫁ぐ。
恋もしたことのない妾が今日、顔も知らぬ男に嫁ぐ。
皇女と生まれた以上これは定めであった。

朱晏につき皇帝に面会した。
深々と頭を下げると重苦しい空気がこの身を刺す。
どうやら妾は歓迎されていない様子だ。
そんな様子に付いてきた女官は心配げに妾に身を寄せる。

「深華殿、遥々よく来られました。我が朱晏皇帝 李影です。顔をあげてください。」
言われるままに顔を上げると皇帝の顔が目に入った。
若々しい自信に溢れた顔でそれでいて繊細さも感じられる。
一瞬、その容姿に見とれ、止まってしまったがすぐに我に返り前を見据えた。


「静京から参りました、深華にございます。どうか末永くお願いいたします。」
「ああ、我こそ頼みます。」
妾は分かっていなかった。
このとき既に妾は救われぬ恋をしていたことに。
その日から妾は美しい皇帝の后となった。
皇帝は妾を庭に案内してくれたり、お茶に誘ってくれたり様々なことをしてくれた。
だから、妾はこの方と一生添い遂げられると思った。
けれど、たまに李影様は城中から姿を消される。
視察に行かれているのだろうと女官に葉言われるが、妾は知ってしまった。あの方が他の女人と過ごされ、妾と過ごすときとは違う表情をその女人には見せることを・・・・・・。

「李影様、妾は愛されないのか?妾はただ国の為に嫁いできたのか?」
その問いに答える者はいない。
ただ静けさだけがその場を支配する。
そんな風に考えてしまう日々が続いていたある日、皇帝が妾の部屋を訪ねてきた。