それからアタシは、父にも母にも何でも思った事は言うようになった。


生きているうちしか話せない、伝えられない事があると思った。


母は元から容赦ない母ちゃんだったけど、父も病人だからって容赦無かった。


テストで悪い点を取れば怒られ、誠二と喧嘩すれば叱られた。



だけど、それも嬉しかった。


そんな普通の事が大切だった。



怒られるのも叱られるのも、全部父さんが生きている証拠。


だから、父さんとも病室でよく喧嘩した。



「ナツコは悪くないもん。誠二がナツコの事バカって言ったんだもん。」



だから誠二を思いっきり殴ってやった。


そしたら、場所が悪かったのか、誠二の口の中が切れて血が出てしまった。



「ナツコ、バカと言われたからって殴るのはダメだ。言われたなら言い返しなさい。手を挙げるのは弱虫のする事だぞ。」



そう言われても、口じゃ誠二に勝てないもん。力でだって女のアタシの方が弱いじゃないか。



「だって口じゃ勝てない…。」



父に怒られて半泣きになりながらそう言った。