「おい、いつまでそうしている気だ。いい加減重い」

「なっ!?」

頭上からの声に自分を支えていたのは人間だということに気づく

しかしながら、“重い”というのはどうだろうか……乙女に向かって


一言、文句を言ってやろうと腰に手を当てて後ろを振り返るとそこには―――右目に黒い眼帯した藍と言ったらいいのか分からない黒髪をの青年がいた

眼帯で整った顔が隠れて勿体ない

そして瞳の色は茶色―――




思わず見とれて止まっていると青年はそのまま踵を返してしまった

「あっ!ちょっと……!?」


レイが一歩足を踏み出したところに“チャリ”とつま先に触れたものがあった

「これ……」

きっと彼の落とし物だ――そう確信したレイはそれ……ブレスレットを手に後を追いかけた











「よぉ!ヨル、何処に行ってたんだ?」

店に入って来たヨルに店のカウンターから上機嫌な男が話しかけた

「別に。つーか、いつまで呑んだくれてんだよ」

酒瓶を片手に持つ男――バルドにヨルは呆れ果てた、という視線を向ける

「いいじゃねぇか!今日は祭典なんだからな!!」

そんなヨルを余所にバルドはガハハ、と笑いながら周りの同世代の男達と宴会を続ける

その様子にため息を吐き、カウンターに立つ

「ヨル!酒だ酒!じゃんじゃん持って来い!!!」

宴会に参加する中の一人ダッドが既に酒によって顔が赤くなっているにもかかわらず、酒を要求する

「うるせぇな!!いつもそうやってツケにすんだろうがッ!いい加減払え!くそオヤジ!!!」

勝手なことばかり言う男たちにヨルも青筋を浮かべて罵倒する


全くもって、騒がしい店である

そのせいなのか、普通の客は少なく、いつもツケていくガラの悪い男達ばかりで店の席は埋めつくされる

その結果、打倒赤字の店になってしまった

そんな店の名前は――“ギルド”