窓の外―――バルコニーへ出ると先程まで街にいた人達が全員と言っていいほど城の門近くに来ていた


「すごい………」

「国の民は俺の家族みたいなものだ」


そう言ったエドガーの紫の瞳には優しい光が宿っていた

国民を家族と言える人が納めるこの国は―――

「いい国なんですね」

「そうか…?女神に気に入って貰えてよかった」

「この国に住むみんなは王様を慕ってる。距離はこんなに遠いのに……信頼されてる」

自分の世界とは大違いだ、とレイは自分の世界に、ほんの少し悪態をついた


「あ、挨拶はいいの?」

「手を振るだけでいい。声は届かないからな」

こんなに高いところなら当たり前か……

「レイも振ってみろ」

「わ、私はいいよ…!!王様みたいに偉くないし!」

「みんな長い間、女神を待っていた。レイが手を振ってやればみな喜ぶ」


エドガーの微笑みに負け、レイはぎこちなく手を緩く振った








一方では――――

「ねぇ、王様の隣にいる女の人誰だろう?」

まだ十にも満たない少女が隣に居る中年の男に聞く

「あ〜、ダメだ。俺にゃ見えねぇーな。おい、ヨル。お前になら見えるんじゃねぇか?」

男は後ろで酒の瓶が入った木箱を持つ青年に聞く

青年――ヨルは“働けよ”というため息を吐きながら城のほうを見る

最初はうんざりしたようだった目も城で手を振るレイの姿を捕らえた瞬間、その眼は驚きに彩られる

「…あれは―――!」

「ん?なんだよ?何が見えたんだ?ヨル」

いきなり目を見開いて止まったヨルに男――ハイドは怪訝そうにして問う

それにヨルはただ一言だけ返した――――

「女神だ」