「俺の瞳を見てみろ」

エドガーの指示通り、レイは彼の瞳を見つめる

「何色だ?」

改めて見ずとも彼の瞳は知っている

「紫…です」

「紫の瞳は王族の証だ。アイルの瞳を見てみろ」

今まで後ろで黙っていたアイルは突如名を出され、ほんの少し驚いたようだ

その驚いた表情を知られないようにすぐに繕う

レイはそんなアイルを見つめ、口を開いた

「碧(みどり)です」

「碧は貴族の証。」

「カナンは?」

カナンの瞳は今まで上げた中にはない茶の瞳―――レイの世界では珍しくない色だが…カナンのものは光の加減によって赤にも見える

何故かエドガーは言いにくそうに口を閉じている

「私たちの茶の瞳は一般の一族です」

しかし、その沈黙を破ったのは予想外にもカナン自身だった

「多くのものがこの茶の瞳を有しています。ですが…私のように紅に近い瞳は―――」

言葉を途中で詰まらせカナンは目線を下げる―――その表情は苦しいような悲しいようなそんな表情だった

「カナン…。………答えなくていいよ?」

気遣わしげなレイの言葉にカナンは弾かれたように顔を上げ、レイの顔を見る

「レイ様……?何故、そのような悲しい表情(かお)を…?」

「カナンが悲しい表情、してるから………。ごめん…ね、そんな表情させたの私だ……」

「レイ様のせいではありません!!これは…これは――――」


胸の前で握るカナンの震える手にレイは優しく手を重ね、微笑んだ

「大丈夫…カナンはカナンだから」

「レイ様………。」


会って間もない彼女はまるで全て見透かしているようだ――その瞳には何が見えているのか

全てを包み込む青空のような瞳――あながち、外れてはいないな

エドガーはレイを見つめながらふと、そんなことを思った