エドガーに止められたアイルは不服そうにしながらも、口を閉じた


いきなり怒られたレイは疑問符を浮かべて首を傾げる―――――怒られたことによる恐怖はなかったが、ただアイルが何故そこまで怒るのかがわからなかった

「アイル、レイへの無礼は俺が許さない」

「しかし………」

「お前、女神を侮辱するのか…?よりにもよって今日この日に」

エドガーの目はしっかりとアイルを見据えていた

今日は“女神の祭典”そんな日に伝説の女神を無下にするという行為がどういうことかわかっているのか――エドガーの目がアイルにそう伝えていた



アイルもこの国で生まれ生きてきたのだ

国の守護神といわれる女神を侮辱する行為がどれだけ罰当たりなことは知っている

しかし、目の前の少女―――レイが女神というのも王室に関わるものとして簡単に信じることができなかった


「カナン、レイに見合うドレスを頼む。それから――――」

カナンに小声で何か指示し、それを受けた彼女は笑顔で“かしこまりました”と答え、レイを部屋の外へ誘導した

「え?あの…ドレス?」

話について行けないまま、レイはカナンの後をついて行くのだった







部屋に残ったアイルは先程のこともあり、躊躇いながら口を開いた

「エドガー様…どうなさるおつもりですか……?」

「レイは城で生活してもらう」

「それは彼女が女神だからですか?…瞳の色だけで女神と決めるのは………」

どうかと――最後のほうは言葉を濁してエドガーを見る

そんなアイルにエドガーは視線のみ向けた

「ならば、俺も正当な王族とは言えないな」

自分の紫の瞳は王族の証―――しかし、アイルの道理でゆくと己が王族であることは否定される

面白そうに話すエドガーとは反対にアイルは焦ったように口を開いた

「あなた正当な王族です…!」

「もういい。今日はせっかくの祭典だ。お前の戯れ言は聞きたくない。出て行け」


少々機嫌の悪いエドガーに命令されアイルは素直に部屋を後にした