どこかは分かっているけど、全然届かない!
 わたしの小さな体では野菜室がやっとだけど、引くことなんてできない。

 もうだめだ、諦めてしいちゃんのところに帰ろうかな……。
 やっぱりうさぎは無力だよ。

 タオルで汗をふいてあげることしかできない。

 結局、何も出来ないから、そばにいることしかできなかった。
 かちかちと時計の針の音だけが響いているのがとっても虚しいよ。

 しいちゃん、気づいて、目を覚まして。
 わたしの願いは届くのかな。

 お昼をさしかかったころ、しいちゃんの腕がゆっくり動いた。

「ん、あれ」

 そのまま立ったけど、ふらっとしてすぐに倒れてしまった、大丈夫?

「るうちゃん、そばにいてくれたんだ」

 その時のしいちゃんの顔はしんどいのも忘れたような笑顔だった。
 わたしの大好きなしいちゃん。

 しいちゃんはだっこしておでこをなでてくれた。
 わたしはなでられるのが大好きだけど、特におでこがお気に入りなんだ。