「すげぇ仕事の効率よくて、信頼厚いし。
なんでも頼れるから、社長もお気に入りなんだ。
社長は実は双子でな、その片割れが居酒屋を隣でやってんだけど、そこでも働いてるらしい。」


「へぇ、掛け持ちなんだ。」


「みたいだな。」



仲良くなったの?と誓耶が尋ねると、慎吾はボリボリと頭を掻いた。



「寡黙でクールなんだよ。
俺なんか相手にされない。」


「…可哀想な奴。」



確かに、そんな一匹狼みたいな奴に、騒がしい慎吾は鬱陶しいだけだろう。



「他の人達とはそこそこ上手くやれてんだけど、大神だけは心開いてくれねぇっていうか…。」


「構ってもらえないんだ?」



おう、と慎吾は肩を落とす。



仲良くなりたいのに、出来ない。



…捨てられた仔犬みたいな奴だな。



「まあ、徐々に慣れてくだろ。
ほっとけ、あんまりしつこくすると嫌われるぞ。」



最後に脅してやると、慎吾は真面目な顔をして頷いた。



…まったく、こいつは変に素直だな。



「特に仲良くなった奴って、どんな奴?」


「んー、みんな高卒の奴ばっか。
俺とおんなじ感じの奴かな。」


「へぇ、よかったじゃん。」



何気に慎吾は自分が高校を中退したのを気にしている。



大学に入った奴に、「中退のくせに」なんて言われると、何も言い返せなかった。



そういうところを何度も見てきた誓耶としては、嬉しい報せだ。



「まあ、頑張って。
クビになってもあたしは笑ってやるよ。」


「なんの励ましだよそれ…。」



慎吾は弱ったように笑って、誓耶の頭を撫でた。