胡蝶蘭








時計の針が、23時58分を指している。



ベッドの上から、誓耶はそれを眺めた。



90度反転した世界。



自分に絡みつく匡の腕。



振れる肌。



息遣い。



今年最後を、こんな体制で迎えるなんて。



「…ッ、うああっ!」



ぎゅっと手を握る。



すかさず匡が唇を塞いだ。



「少し声落とせよ、母さん達に気付かれるだろ。」



至近距離で、囁く。



誓耶は顔をそむけて空気を吸った。



苦しい。



部屋はまた、衣擦れの音しかしなくなった。



階下から、テレビの音が聞こえてくる。



23時59分



カチリと音を鳴らして、針が動いた。



誓耶がそれを見たのに気付いた匡は同じ方向を見やり、ニヤリと笑った。