胡蝶蘭

「えー、あたしは大丈夫だよ。
ちゃんと暮せてるもん。
慎吾は家賃大丈夫なわけ?」


「むむっ、心外。
俺だってちゃんと貯金して保険かけてますぅ。」



しかし、慎吾の生活ぶりを見ていると、いつその保険の通帳を切り崩さなくてはいけなくなるか心配だ。



…いつ誘っても、慎吾の予定は空いている。



ほんとに仕事してんのか?



目の前で無邪気にゲームを選ぶ慎吾。



誓耶は突然駆け出した慎吾の後を追いかけた。



今度はなんなんだ!?



目を輝かせた慎吾が立ち止ったのは、某太鼓ゲームの前。



「お前、これ得意か?
俺、今超ハマってんだよな。」



わくわくと輝いた瞳が誓耶を映す。



そんな目をして、譲る気はないんだろ。



誓耶が無言で撥をとると、慎吾は嬉しそうに笑った。



ちゃりんと音を立てて小銭を入れ、その直後からゲームが始まった。



「どの曲やりたい?」



唐突に、慎吾が顔をこっちに向けた。



「うわぁ。
この中から選べって?
ありすぎて困るよ。」



そういうと、慎吾は待ってましたというように伸び上がった。



「じゃあじゃあ、俺選んでいい?」


「うん、いいよ。
でもなんかあたしでも知ってるのにしてね、卑怯だから。」



はいはい、という軽い返事を返し、慎吾は一度強く太鼓を叩いた。


「なんで選ぶのがアニソンだよ…。」


「え、だってみんな知ってるだろ?」



知ってるけど。



残酷な天使と、ここまで聞きゃあアニメキャラクターまで頭に浮かぶけども。



「あんたそんなアニメ好きだったっけ?」


「いや?
一応ポピュラーなやつ歌える程度。」