胡蝶蘭

「なんて可愛げのない…。」


「慎吾が弱いんだよ。」



誓耶の言葉に慎吾はまた落胆する。



「冷てぇな。」


「知ってるだろが。」


「まあな。」



誓耶はギッと慎吾を睨む。



なんだよ、と言いながら、慎吾は身体を縮めた。



「慎吾もナチュラルにあたしに酷い。」


「お前は全面的に酷いわ。」



よっこらしょと立ち上がりながら、慎吾はパンッと誓耶の脚を叩いた。



「で、次はどれ?
せっかくゲーセン来たんだ、制覇しようぜ。」


「制覇って…。
あんたそんな金あんの?」



光熱費を支払うのが一苦労だと言っていた。



こんなところで自分を遊ばせる金があるとは思わないけど。



心配する誓耶を見ようともせず、慎吾はパタパタと手を振った。



「だいじょぶ。
俺、新しいバイト始めたんだ。」


「へぇ。」



すごいな。



あんまり慎吾と仕事の話したことないから、なんか安心した。



誓耶はへへっと笑って、歩き出した慎吾の隣を歩いた。



「なんか、慎吾が働いてるって聞いて安心した。」


「…俺は高2に心配されてたのかよ。」


「うん、だってあんた危なっかしいもん。」



お前が言うか、と慎吾は呆れ気味だ。