胡蝶蘭








今日は楽しいクリスマス。



…一般的には。



何故か誓耶は友達ではなく、慎吾とイベントを過ごしていた。



「なにが悲しくて今あたしは慎吾とこんなとこで時間つぶしてんだろ。」


「なんだよ、嫌なら帰るぞ。」


「誰が帰るって言ったよ。
あたしはあんたといることを嘆いたんだ、場所じゃねぇ。」



言いながら、誓耶はゲームの銃をぶっ放した。



隣で慎吾が呻き声を上げて、銃の引き金を絞る。



画面の中で敵が倒れた。



「くそっ、誓耶、お前右回れ。
相手挟み打つぞ。」


「はいはい。
判断がおっそいんだよ。」



“俺が指令出す!”と意気込んでいた慎吾に従った結果、これだ。



もう二人の体力は虚しく赤色に光り、制限時間は残りわずか。



誓耶は慎吾の言う通りに動きながら、敵を撃った。



「ああっ、やばい、俺もう死にそう。」


「思い残すことなく逝ってくれ、荷物が減る。」


「あ、ひっでー。
誓耶、お前はふれんどしっぷを尊重しないのか。」



忙しい合間に誓耶を一瞥し、慎吾が不貞腐れる。



「勝敗を重視するね。」



はん、とせせら笑い、誓耶は助けを求める慎吾を無視して最後の敵を撃ち抜いた。



画面いっぱいに華々しく“YOU WIN”の文字が映し出される。



「へへっ、楽勝。」


「お前って奴はもう…。」



隣の慎吾はへたりと座り込んだ。