胡蝶蘭




翌朝。



偉槻はホテルのベッドで目を覚ました。



一瞬、本気で今自分がどこで何をしているのかわからなくなり、頭が覚醒するのを待つ。



痛む頭を押さえ、ああそうだったと思い出す。



結局、あの後女は閉店まで粘り。



同僚たちは無責任にも放って帰り。



偉槻が責任をとらされる羽目になったのだ。



客だと言い張られて、逃げ切れなかった。



店長に迷惑がかかると、大変なことになる。



一夜限りという約束で、偉槻は女の言いなりになったのだった。



それにしても、俺は何をやっているんだ。



こんな風に寝たのは初めてだ。



いくら面倒だったとはいえ、冷静さを欠いたな。



ガリガリと頭を掻き、起き上がる。



女は起きる様子はない。



偉槻はなるべく揺らさないようにベッドから降り、服を着た。



身体がだるい。



時計を見ると、もう朝の9時だった。



舌打ちして、上着を羽織る。



結構長い間ここにいたな。



音を立てないように細心の注意をはらいながら、偉槻は自分の荷物を持った。



…料金は彼女に払ってもらってもいいだろう。



自分に要求されたのは、“一晩限りの関係”だ。



恋人同士のようなオプションまで呑んだ覚えはない。



そう勝手に解釈して、偉槻は部屋を出た。