胡蝶蘭

「いいでしょ?
満足させるわよ。」



身体が売りか。



偉槻は露骨に顔をしかめた。



身体で釣れる男だと思われたところも腹が立つ。



「いやだ。」



吐き捨てると、女は一瞬ぽかんと偉槻を見返した。



今聞こえたことが納得できないといった感じだ。



「いや?
あたしがいや?」



酔ってるな。



ここは同僚が介抱するのが当然だろう。



失礼しますと言って、偉槻は座敷を出た。



「なんなんだあの女。」



低く吐き捨てる。



胸糞悪い。



昔からあんな女に絡まれてばかりだ。



「クールだからカッコイイ」だとか「素っ気ない彼を私がほぐしてあげたい」だとか。



勝手な理由ですり寄られては、掻きまわすだけ掻きまわして去っていく。



女は嫌だ。



面倒だ。



甘い夢だけみて、泣くだけ泣く。



赤ん坊よりも可愛げがなくて、手がかかる。



それが偉槻の評価だった。



それにしても、今日は閉店するまで引っ込んどいたほうがいいな。



偉槻は仕方なく、店長にわけを話すはめになった。