胡蝶蘭

やはり、大人数で、女が多数交じっていた。



まるで忘年会という名の合コンだ。



ちらりと不粋なことを思ってみたりする。



しかし偉槻は無表情でテーブルに皿を置いた。



さて、戻るか。



酒と煙草を香水の交じった臭いのこの部屋から抜け出そうとした瞬間、



「きゃっ!」



振り返ると、悲鳴の持ち主らしい女が服に酒をこぼしていた。



そして、その原因はおそらく…偉槻だ。



「すみません。」



謝罪に驚きを隠せなかった。



ぶつかった感触はなかったのだが。



「すぐに何か拭くものをお持ちします。」



そう言って立ち上がった偉槻の後ろから、「なんだよあの店員。」「無愛想でやな奴だなという声が追いかけてくる。



悪かったな無愛想で。



この忙しい時に面倒なことしちまった。



くそ、と唇を噛む。



割引しなきゃいけないほどだろうか。



なら、店長に迷惑かけるな。



タオルでも持ってったあとに程度みて決めりゃいいか。



不謹慎だがさして急ぎもせず、偉槻は座敷に向かった。



予想通り彼女はおしぼりで応急処置を済ましたあとだった。



業務的に頭を下げ、クリーニング代のことを持ち出す。



すると彼女は悪戯に笑った。



「ううん、服はいいから、あなたが欲しい。」



こういうとき、平常心を装うのは慣れている。



「どういう意味でしょう。」