胡蝶蘭








忘年会シーズン突入。



店にとってはかきいれどきだが、肉体疲労が激しくていけない。



ゴキリと嫌な音がした肩を揉み、偉槻は缶コーヒーを空けた。



近くのゴミ箱に放り投げて立ち上がった。



休憩はいつもより短い。



理由は簡単。



人手が足りないからだ。



そのためここ最近、運送のほうには回っていない。



それどころか、ギターにも触っていない。



家に帰ったら昏倒だ。



メシもろくに食ってねぇ。



偉槻は額を掻きながら、厨房に入った。



「戻りました~。」


「おう、持ってってくれ。」



ドンッと何かが押しつけられた。



見ると、サラダ。



大盛りの。



それを両手に抱え、指示されたテーブルに運ぶ。



女多いのか?



サラダを好き好んで食うのは女だろう。



偉槻は無意識に詮索してしまう。



苦手意識の為せる技だ。



少し気遅れしながら、失礼しますと声をかけて座敷に上がる。