「もう、あんたとは今日で縁切りなの。
わかったか?」


「わかってるよ、もう会うつもりがないから、最後に金のこと訊いたんだ。」



少し、言われたことにムッとして、偉槻は柄にもなくそんなことを言ってしまった。



言ってしまってから、少しきつかったかと後悔する。



いつもこうだ。



いつもこんな面構えで、こんな口調じゃあ、他人に怖がられる。



いつも、「イツキ君って怖い」と言われて去られた。



顔に寄ってきたのはお前達だろうと、何度となく罵倒した。



そうやって懲りたはずなのに、いつも同じことを繰り返してしまう。



「悪い...。」



偉槻は彼女のほうを見ずに、詫びた。



返事はない。



「行くぞ。」



そう言って歩き出すと、足音がついてきた。



一応、後ろにいることがわかって安心する。



また待ち伏せされているだろうから、偉槻は違うルートでアパートに帰った。



表ではなく、裏口から入る。



裏口と言っても、勝手に偉槻が呼んでいるだけで、ただの窓だ。



ぎいっと音のする木枠の窓を開け、辛うじて身体をねじ込む。



偉槻にはきつい幅も、彼女には余裕なようで、後ろに続いた彼女はするりと猫のように中に入ってきた。