胡蝶蘭

警察に通報されるかもしれないとも思った。



我が身可愛さに知らんふりをしようかとも、一瞬だが思った。



だけど、出来なかった。



彼女達の関係も、真意もなに一つ知らないながらも、何となく彼女が悪くはないことが感じられたからだ。



「もうここまで来たなら助けてやるよ。」



偉槻が言うと、少女は笑った。



「最初は嫌な奴だと、偉そうな奴だと思ったけど、何か想像と違った。
あんた、ただのお人好しだよ。」


「悪かったな。」



本来ならキャラじゃない。



ただ、ケータイを雨の中届けさせて、風邪を引かせてしまった。



これは、少なからず偉槻に責任がある。



「で、どうするんだ?」


「どうするって?」


「出てくって言ってたけど、あれは?
知り合いん家でも転がり込むつもりか?」


「あ、ああ。
そのつもり。」



家に帰る気はないのか。



それは愚問だと、さっきのでわかった。



彼女が頑ない帰宅を拒否したのには訳があった。



まぁ、それは赤の他人の偉槻が気にすることではないが。



「俺はどうすればいい?
送ればいいか?
病院の治療費でも渡すか?」



バッと手が振り払われた。



「だから、あんたのせいじゃないって言ってんじゃん!
くどいよ、鬱陶しい。」



鬱陶しいって...。