胡蝶蘭

偉槻は思い切って二人に向かって走り出した。



「来い!」



驚いてくれたお陰で、時間が稼げた。



出来た隙を見逃さず、偉槻は少女の腕を取った。



そして振り返らずに走り出す。



彼女も必死についてきた。



風邪っぴきの彼女を走らせるのは酷だが、仕方ない。



散々、狭い路地を走り抜けたところでやっと偉槻は足を止めた。



「お前は…。」



はあはあと苦しそうに息をする少女を睨む。



「出てった直後にあっさり捕まりやがって…。」



こっちの心臓に悪いったらない。



「あんたこそ、馬鹿して…!」



苦しそうな息の間から、彼女は声を絞りだす。



「目ぇつけられたよ、絶対。」


「わかってるよ。」



そんなん、GPSで所在地が知れた時点で覚悟した。