胡蝶蘭

偉槻はすぐに彼女のケータイを取り上げ、玄関に向かった。



予想通り、従兄はそのまま立っていた。



「これ、この間拾ったんだ。」



差し出すと、無言でひったくられた。



「本当に?」



じろりと一瞥される。



「嘘ついてどうすんだ。」


「…嘘ついてたら、警察呼ぶよ?
拉致とかじゃないだろね?」


「お前こそ名誉棄損だぞ。」


「はいはい。
お邪魔しました。」



ショートヘアでTシャツ短パンの男っぽい女の子見つけたら教えてね、と男は言って、立ち去った。



偉槻は無言でそれを目で追う。



完全に見えなくなってから、偉槻は中に入った。



「…連絡先置いてかないで、どうコンタクトとんだよ。」



ドアを閉め、しっかりと鍵、チェーンをする。



「おい、帰ったぞ。」



叫ぶと、少女はごそごそと出てきた。



「なんなんだよ、あいつ。
従兄なんだろ?」


「従兄でも嫌いな奴いるだろ。」


「そんなこと言ってんじゃねーんだよ。
人ん家勝手に上がりこんだ挙句、嘘まで吐かせてどういうつもりだよ。」


「あたしはいいって言った、上がりこんでない。」



彼女はギッと偉槻を睨んだ。



少し怯む。



その間に、少女はさっさと座ってしまった。