胡蝶蘭




夜が明けた。



偉槻はカーテンをめくり、外の様子を見る。



雨は降りそうにない。



晴天だ。



昨日とえらい違いだな。



「おはよ。」



驚いて振り向く。



少女が立っていた。



「熱は?」



まだ眠ってから3時間ほどしか経っていない。



「もう起き上がれるから平気だよ。」


「…こっち来い。」



言うと、少女は素直にやってくる。



偉槻は腕を引いて座らせ、額に手をやった。



少女は最初少し怯えたが、大人しくされるがままになっている。



昨日から思っていたのだが、どうして触れられると怯えるんだろう。



偉槻は内心首を傾げた。



「まだ熱くないか?」


「でも、歩けるから。」


「無理するな。
俺には責任がある。
黙って世話になっておけ。」



しつこい、と怒られてしまった。



「あたしはあんたのせいだって一言も言ってねーだろ。
あんたが勝手に言ってるだけだ。
ほっとけ。」



毒づく彼女の電話のときほどの迫力はない。



やっぱり、本調子じゃないな。