胡蝶蘭

悪い事を聞いたか?



偉槻は少女を窺うが、彼女は気にした風もない。



「悪い。」


「別に。
親が恋しいわけでもないし。」



やけに淡々としているな。



逆に清々しい。



「じゃあ、さっきのは叔父夫婦の息子か?」


「あたり。3つ上の従兄。」


「…お前を探してるみたいだったぞ。」



すると少女は顔を強張らせた。



これが地雷か?



偉槻はぎくりとした。



「…なんかあんのか?」


「言わない。
絶対、言わない。」



何故睨まれる?



偉槻が怯んだ隙に、彼女は布団に横になった。



「明日、っていうか今日、病院行くから。」


「いいよ。
明るくなったら帰る。」



さっきまで帰りたくないって言ってただろう。



なんなんだ。



「まあ、帰るって言うなら止めないけど。
具合悪いままなら送らせろ。」



聞いているのかいないのか。



彼女はまた返事をしなかった。