胡蝶蘭

「相当だな…。
おい、放せ。
タオル持って来てやる。」



そう聞こえたが、熱の高い誓耶には理解できない。



手を振り払われ、また不安に襲われた。



足音が遠ざかっていくのがわかった。



待って、行かないで。



心の中でそう願うも、もう気配はない。



誓耶は布団の中で身体を縮めた。



待つ時間は永遠に感じられる。



と、足音が戻ってきた。



目を開けると、影がさす。



額に、冷たいものが置かれた。



「ん…。」


「冷やしたタオルだよ。」



イツキの声が答えた。



一気に身体の力が抜ける。



誓耶は息を吐いた。



「悪かったな。」



彼の声が、聞こえる。



意識の朦朧としている誓耶は、ただ音としてそれを聞いた。