胡蝶蘭








寒い。



誓耶はガタガタと身体を震わせた。



濡れた髪が余計に体温を奪っていく気がする。



布団にくるまってもなお、震えは止まらなかった。



なんであたしこんなとこにいんだ?



本当なら、慎吾の家にでも泊めてもらうつもりだったのに。



あの時、何も言わなければよかった。



慎吾、まだ怒ってんのかなぁ。



今、慎吾に会えないのは辛い。



一番仲の良い、信頼できる友達なのだ。



もし、このまま縁が切れるなんてことがあったら、誓耶はもうどうしようもない。



それが今の誓耶には一番怖かった。



咳が出た。



一度咳をしたら、止まらなくなった。



息が出来ず、胸が苦しくなる。



「おい、大丈夫か?」



いきなり開けておいた扉から、男が顔を出した。



確か、名前はイツキだったか。



変わった名前なので、誓耶の記憶に残っている。



「おい、お前。」



返事をしない誓耶の横に、彼はしゃがみ込んだ。



「熱、上がってきたんじゃないだろうな。」



ひやりとした手が額に当てられる。