胡蝶蘭

「お前はどう思うんだ?」



問われて偉槻は即答した。



「俺はあいつが嫌だと言わない限り、決心は変えません。」


「なんだ、もう決まってんじゃねーか。」


「問題は俺の気持ちじゃなくて、世間です。」



うーんとみんなが唸る。



「いっそ、籍入れちゃえば?」



言われて少し考える。



…でも、正直あいつと結婚なんて考えられない。



好きだ。



でも、一生添い遂げるつもりかと訊かれれば答えに詰まる。



何事にも縛られるのが嫌いな偉槻にとって、結婚とは重いものだった。



「いや、俺の性格からすると結婚は無理だ。
それに、俺はアルバイターで収入に余裕はない。」



大学も行っていないから学もない。



「俺がお前なら正社員にしてやるぞ。」


「ありがたいです。」



本当にそうしてもらえるかは期待しない。



期待して、がっかりするのは好きじゃない。



「じゃあまぁ、当たって砕けろでいけば?」


「あぁ。
一回あいつと話してみるよ。」



今日は土曜日。



偉槻はあとでメールをしようと決めた。



外では、もうサラリーマンが出勤を始めている時間帯だった。