一瞬、周りの音が消えた。



そして自分の置かれた状況を認識して音が戻ってきた頃には、室内は騒然としていた。



健が怒り狂って茉理子を殴り飛ばし、医師は倒れた茉理子を取り押さえている。



誓耶は唖然と赤に染まっている自分の肩を見つめた。



「ちか…、だいじょ…。」



本調子ではない偉槻は、思うように身体を動かないらしい。



呂律が回らない声で、何度も誓耶を呼び、必死で起き上がろうとしている。



「誓耶!」



健が誓耶を抱き取る。



偉槻は不安そうに誓耶を追って、手を空中に彷徨わせた。



「行こう、破片が入ってるかもしれない。」



健はそんな偉槻に見向きもしない。



相当焦っているようで、健も忙しなく視線を走らせていた。



狂ったように茉理子は誓耶を追い回す。



健はがむしゃらに茉理子を蹴り飛ばした。



誓耶はわけがわからないまま、病室は連れ出される。



処置室ではさっきの医師がすでに待っていた。



ぼうっとしている誓耶を何人かが抑え、てきぱきと血を拭き取っていく。



健は泣きそうな顔でそんな誓耶を見つめている。



感覚が麻痺しているらしく、痛みは感じない。



だから、そんな顔しないでよ健…。



誓耶はぼんやりと健を見つめていた。