口火を切ったのは、誓耶のほうだった。



というか、我慢できずに涙が決壊した。



わあっと偉槻に泣きつく。



包帯を巻かれた腕を上げて、偉槻は誓耶を抱きしめた。



「泣き虫…。」



掠れた声。



その声が怖くて、誓耶はまた泣いた。



「ったく、バカップルめ。」



健が呆れて、誓耶の頭を撫でる。



誓耶はぎゅっと偉槻に抱きついた。



突然、パリンと何かが割れる音がした。



なんだ、とみんなが辺りを見渡す。



茉理子が手に割れた花瓶を握りしめていた。



「なにやってんだあの女。」



健の言葉に、茉理子はきっと顔を上げる。



「いつもいつも、この女があたしの邪魔をする…!」


「は?」



茉理子は何かに憑かれたかのように、ぶつぶつよ何か言っている。



「死ねばいい!」



いきなり茉理子はベッドを回り込み、花瓶を誓耶に向かって振り上げた。



あっと思っている間に、片口に痛みが走る。