受け身を取り損ねた慎吾は派手な音を立てて転がった。



「おい偉槻、なにやってんだ!」



さすがに見兼ねた同僚が間に入る。



偉槻は息も荒く、慎吾を睨んだ。



「俺が何をした!?」


「あいつ泣いてたぞ!!」



慎吾の言葉に、偉槻はああそのことかと納得はいった。



急に静かになった偉槻に、同僚がなんだと慄く。



「お前には関係ないだろ。」


「あるだろ!?
どうしたらいいかわかんないって、泣いたんだ!」


「それがどうした。
もう、どうしようもないだろ。」



しんとした倉庫に、偉槻の冷えた声が響く。



慎吾は憎しみのこもった目で偉槻を睨む。



「偉槻がそんな奴だとは思わなかった…!」



いい奴だと思ってたのに、と悔しそうに言う。



だから、と偉槻は口元を歪めた。



「俺はそんなお綺麗な奴じゃないって言ったろ?」



お前が勝手に懐いてたんだろ。



最ッ低、と慎吾は憎々しげに吐き捨てる。



知ってるよ。



わかってくれなんて言わない。



許してくれだなんて、言わない。



俺を憎め。



…憎んで、未練なく離れていってくれればいいんだ。