話を聞き終えた慎吾は、うーんと唸った。
「悪ぃ、話させといてなんだが、俺も理由がわかんねぇ。」
「うん、あたしも…。」
「別に、お前がなんかしたふうには聞こえなかったがなぁ…。」
あたしも、心当たりがまったくない。
気付かないうちになにかしてたんだろうか。
「大丈夫か…?」
慎吾が優しく誓耶を覗き込む。
誓耶はなんとか笑ってみせた。
「あたし、帰るな。」
「もう?
大丈夫かよ。」
「うん、話聞いてもらって、すっきりした。」
しばらく慎吾はじっと誓耶を見つめていたが、やがて笑顔で言った。
「そ。
じゃ、玄関まで送るよ。」
「ん。」
気ぃつけな、と一度誓耶の頭を撫で、慎吾は誓耶を見送った。
誓耶振り向かずに階段を降りる。
背後でドアが閉まる音がした。
途端、孤独感が誓耶を襲う。
…暗い。
…怖い。
誓耶はコートをぎゅっと握って走り出した。