このままでは帰れない。



誰かに助けてほしくて、話を聞いてほしくて、誓耶は慎吾のマンションに向かった。



とぼとぼと階段を上がる。



久し振りだな、ここへ来るの。



慎吾、びっくりするんだろうなぁ。



予想通り、誓耶が立っているのをみた慎吾の顔は傑作だった。



「おま、何してんだよ!
しかも泣いてるし!」



あらあらまあまあ、と慎吾は慌てて誓耶を引っ張り込む。



「なんで泣いてんの?」



優しく涙を拭きながら、慎吾は誓耶をソファに座らせた。



「何があった?」


「偉槻があたしに会いたくないって。
別れるって。」



慎吾は何も言わなかった。



見たことない真顔で、誓耶を見つめている。



「お前、それ、偉槻が言ったの?」


「うん、さっき。」


「本気だって?」


「うん、もう会いに来るなって。」



慎吾はゆっくりと息を吐いた。



ふざけている顔からは想像できない真剣な顔。



誓耶はその顔が少し怖かった。



「全部、話してみ?」



話している途中に泣きそうになるかと思ったが、思ったより素直に言葉が出た。