「連れて帰るか?」



……は?  



「別にここ貸してやってもいいけど、何かと不便だろ。
お前のアパートにでも連れてってやれ。」


「はぁ。」



マジかよ。



この俺がガキとはいえ、女を家に連れて帰るなんて。



久し振り過ぎる。



「じゃあ、そうします。」


「はいよ。」



店長がまたもや土産に持たせてくれた天むすと焼き鳥のパックを下げ、偉槻は少女に近寄った。



「おい。」



おずおずと声をかけてみるが、全く反応がない。



「おい、お前。」



物騒な声かけだが、名前を知らないのだから仕方がない。



「起きろ。」



少し身体を揺さ振ると、彼女はビクッと飛び起きた。



「こら、あんま急に動くな。
病人だろ。」


「ん…。」



眩暈でもしたか、彼女は眉間を押さえた。



「行くぞ。」


「どこへ?」



彼女は不安げに偉槻を見上げた。



「俺の家。
泊めてやる。」


「……悪い。」



ほら、と顎をしゃくると、少女は足を踏張る。



立ったのを確認すると、偉槻は声を張り上げた。



「店長、お先に失礼します。」


「おう!
気を付けてな。」



ニカッと笑う店長は、男の中の男だと思う。



偉槻は少女と連れ立って湿った朝の道へ踏み出した。