胡蝶蘭

「わかった、頼むから大人しくしててくれよ。」


「ここで飲んでるわ。」



偉槻は踵を返して厨房に戻った。



と、いきなり腕を掴まれる。



「田中…。」


「偉槻、どういうことだよ!?」


「はぁ?」


「あの女と付き合ってんのか?
誓耶ちゃんは!?」



関係ないだろ。



偉槻は顔を背けて腕を振り払った。



それでも田中はしつこく付きまとってくる。



「なぁ、偉槻。
あの子とは別れたのかよ?」


「関係ない。」


「あるだろ?
あんだけ溺愛してたのに。
なんでよりによってあんな女に…。」


「黙れ。」



田中は偉槻に睨まれて竦み上がった。



自分は今、どれだけ凶悪な顔をしているんだろう。



偉槻、と田中がつぶやく。



「お前、どうしたんだよ…。」



偉槻は答えずに田中の横を通り過ぎた。



料理を手に抱え、がむしゃらに運び続ける。



それでも頭はいっぱいだった。



くそっ。



自分で決めたことなのに、悔しい。