胡蝶蘭

「これで、あいつには手を出さないな?」



そういう条件だろう?



「あいつ?」



とぼけたように、茉理子が言う。



「誓耶に決まってんだろ。」


「え、ええ。
関係ないものね?」



探るように、茉理子は偉槻を見上げる。



「ああ、あいつと俺はもう他人だ。」


「そうね。」



得意げに、茉理子は髪を掻き上げる。



「何もしないよな?」



うやむやにはさせないぞ。



迫るように偉槻が言うと、茉理子はむくれて頷いた。



「わかったわよ、もう関わらないわよ。」


「嘘じゃないな?」


「偉槻があたしをないがしろにしないなら、ね。」



茉理子の手が偉槻に伸びる。



偉槻はさり気なく身体を引いた。



「俺、仕事あるから。」


「終わるまで待ってるわ。」


「今、か?」


「今じゃなかったらいつなのよ?」



偉槻は片頭痛を感じた。