胡蝶蘭

実は、偉槻なりに考えたことがあった。



殴りたい。



誓耶が味わった苦痛ををそっくりそのまま返したい。



そう思っていた、自分の情けなさも見えてきた。



行動を起こさなくてはいけないのは、俺だ。



腹を括るべきなのは、俺だ。



店長が黙り込んだ偉槻を心配そうに呼ぶ。



我に返った偉槻は、少し微笑んで見せた。



「面倒かけました。」


「いやいや。
しっかりな。」


「はい。」



店長は気を利かせて、先に出ていった。



偉槻は一人、深呼吸する。



ゴメンな、誓耶。



怒らないでくれ。



暖簾をかき分けて出ると、一気に喧しくなる。



偉槻は軽く顔を顰めた。



見回すと、やはりいつものように茉理子がカウンターに一人座っていた。



眉根にしわが寄る。



偉槻は軽く眉間を揉んで、茉理子のほうへ歩きだした。



手元にさした影に気付いたらしい。



茉理子はゆっくりとこちらを振り返った。