「別に怪しいもんじゃないですよ。」


「…十分怪しいわよ人様のうちの子になにしてるの。」


「なにも。」


「誓耶ちゃんいらっしゃい。」



叔母が誓耶を引っ張ろうとすると、偉槻はすっと誓耶を後ろへ押しやった。



「ちょっと、気分転換させてきます。」


「駄目です、今その子は体調が悪いんです。」


「知ってますよ、だから連れ出すんです。」



意味がわからない、と叔母はつぶやく。



確かに、普通に聞いたら滅茶苦茶だ。



誓耶は偉槻の背中に抱きつきながら思った。



「ちゃんと責任もって家に届けます。」


「見ず知らずの男の責任なんて信じられません。」



叔母は唇をぎゅっと引き結んでいる。



こういうところは、お母さんなんだなと思う。



鬱陶しいと思う反面、自分を心配してくれる彼女に感謝もした。



そんな自分の感情に混乱する。



誓耶は偉槻の背中からそっと叔母を窺った。



「誓耶、自分で頼め。」



はあっとため息をついて、偉槻が誓耶を振り返る。



上目使いに窺うと、顎をしゃくられた。



「お前が頼んで許しもらえ。
俺はお前を置いてって一人でメシ食うぞ。」


「ひどい…。」


「だから、お前がちゃんと許しもらえば連れてってやるって。
未成年なんだからお前は。」