胡蝶蘭

腕をぐっと掴まれる。



途端、あの夜のことが蘇ってきて、身体をくの字に折れ曲がった。



「誓耶ちゃん!?」



声が出ず、腕を振り払って家を飛び出す。



叔母は名前を呼んで、追いかけてきた。



足をもつれさせながら逃れていると、ふいに門のところで腕を掴まれた。



「どうした。」



偉槻が煙草をくわえて立っていた。



片手で煙草をいじり、誓耶の目を覗き込む。



ほっとした。



倒れかかるように、偉槻に抱きつく。



後ろで息をのむ声がした。



偉槻の身体が強張る。



「あなた、誰。」



叔母の震える声。



誓耶はそっと偉槻を見上げた。



…うわぁ、目付き悪…。



第一印象最悪決定。



しかも、片手に煙草を持っているときた。



いつもはあたしの前で吸わないのになんで今日に限って…。



「誓耶ちゃん、この人誰なの。」



面倒くせぇ、とつぶやいた声は、偉槻に聞こえたらしい。



咎めるような視線を送られた。