胡蝶蘭

答えないでいると、電波の向こうかたため息が聞こえてきた。



『今、家だろ?』


「うん。」


『出てこれるか?』


「うん。」


『昼飯でも食わしてやる。』


「うん。」



お前んちの下で待ってる、と偉槻は一方的に電話を切った。



誓耶はのろのろと起き上がった。



身体がだるい。



思うように力が入らなかった。



でも、行きたい。



誓耶は手近にあったダウンを羽織り、ケータイだけ持って部屋を出た。



「あたし、出かける。」



リビングに顔を出し、外出を告げる。



昼食の用意をしていた叔母は驚いた顔で誓耶を振り返った。



「出かけるって…。
お昼は?」


「いらない、外で食べる。」


「外って。
貴方、体調悪いんだから、家にいなさい。」



答えるのが億劫で、誓耶は無視して玄関に向かった。



「誓耶ちゃん!」


「ほっといて。
こんなときだけ世話やかないで。
いつもみたいにほっとけよ。」


「そんなわけには…。」