胡蝶蘭




嫌だ、止めて。



暗い路地。



消えたりついたりする街灯。



走る自分。



そして、後ろから追いかけてくる足音。



誓耶は必死で逃げまわった。



来るな、止めろ!



闇から出てきた手が、誓耶の腕をつかんだ。











ブブブブブ。



振動と音が、誓耶の目を覚ました。



ハッと目を開けると、見慣れた壁。



誓耶は涙目を何度か瞬いて、うつ伏せの状態から起き上がる。



枕元のケータイが着信を告げていた。



「はい…。」


『俺だ。』


「うん…。」



偉槻…。



誓耶は脱力してケータイを両手で握りしめた。



少しの沈黙。



『…大丈夫か?』


「うん。」


『嘘だな。
またなんか怖い夢か?』